武田邦彦(中部大学)の放射能関係の記事の疑問点
武田教授(中部大学)は東日本大震災いらい原発や放射能に関して多数の本を書かれてます。
それらの分野では専門家の筈ですがホームページに書かれている記事の内容は疑問が多いのです。
それで第一種放射線取扱主任者の資格を、お持ちで現役で実務を行われている方に下記の記事の
内容を確認していただきました。
それで分かったのは、あちこちから集めた文書の図を部分的に切り取って使い元の文書の作成者が
伝えたかった筈の事と違う、誤解されやすい説明を付けていることが有ることです。
説明に使われた図は、どれも出典が明示されてません。
どこかの資料を引用するなら、その引用元を明示するのは学者ならマナーの筈です。
またICRPのLNTモデルがリスク比較にのみ意味を持ち集団の死亡数を予測をするのは不適切と
されているのに故意に単純な比例計算して意味の無い死亡者数を出して不安を煽ってます。
以下で灰色背景の部分が、もとの武田教授の記事に書かれている内容です。
引用はご自由にどうぞ。 と有りましたので遠慮無くコピーさせて、いただきました。
その問題ページは残念ながら、いつのまにか削除されてます。
記事1 「被曝の限度は民主主義で・・・1ミリと20ミリの違い (平成25年11月11日)」 の疑問点
免除レベルというのが「受け入れできる線量」、つまり実質的に健康影響がないことを決めるレベルです。 これは日本では1年0.01ミリになっていて、それを超えることをした人は、実に「懲役1年以下」の罰則になります。当然ですが、人の健康に影響を与えるのですから、いわば傷害罪です。
日本では1年0.01ミリと有りますが単位もなければ対応する資料も示されてません。
懲役1年以下の罰則と下記の記事2にも同じ表現が有るので「放射線障害防止法」の改正の事でしょうか
それでしたら廃棄物の線量の事で「健康影響がないことを決める」線量の事では無い筈です。
次に「線量限度」があり、それが1年1ミリです。これは「望ましくないが社会的に耐えられる線量」ですから、健康影響はあるのですが、耐えられる限界というものです。
これについて、がんセンターで明確に示しています。
この表はがんセンターから出ているもので、専門的な表ですから「10万人あたり」になっていますが
その表は次の講演会で使われた「資料1」と同じ文書の一部分の切り取りです。
それどころか切り取ることにより、自然発生頻度が10万人あたり3万人に対して1mSv では5人と
極端な差があることや、統計学的に有意な増加とは言えないなど重要な点を隠して誤解させようと
しています。 線量限度が1年1ミリとの主張の根拠も示されてません。

【資料1】 東葛6市 第1・2回 空間放射線量測定結果に基ずく見解 (PDF)

注.これは講演会の資料なので口頭で説明された事は書かれてない場合があります。
それを次の表に示します。この数値は1億2700万人で、どのぐらいの犠牲者(火災の場合は焼死者、交通事故は交通事故死亡者、被曝の場合は(致命的発がんと重篤な遺伝性疾患)の合計です。

この表は、他の災害と比較するために10万人あたりを12700万人に計算したもので、社会が耐えられるかどうかは、この表で決まります。火災で2000人、交通事故で5000人で、これに対して1年1ミリなら8001人、1年20ミリなら16万人です。
上の説明はLNTモデルに科学的に根拠があると勘違いさせ、20mSvは危険との印象を与えようと
しています。表の出典も書かれてませんので、ご自分で作られたのでしょうか。
ICRPのLNTモデルは 100mSv以下は被曝の影響が少なく、確かな臨床データなど無いので
100mSv で 0.5% リスクが増えると仮定され低線量までリスクが線量に比例すると、より安全な
放射線に対する防護になるよう仮定されたのです。
もともと 0.5% リスクが増えとの仮定であり、0.5% 死亡者が増えるとの仮定ではありません。
ですから資料2のように、LNTモデルが予測する小さな確率はリスク比較にのみ意味を持ち
集団の死亡数を予測をするのは不適切とされてます。

当然、学者なら「集団の死亡数を予測をするのは不適切」と言うことを知っている筈なのです。
それなのに上の説明は1年1ミリなら0.005% で8001人、1年20ミリなら16万人と単純に比例計算して
その根拠も無く犠牲者数を書いて、一般の人に不安を与えてます。
意味ありませんが比較を書くなら火災や交通事故に対してでなく癌の自然発生頻度が10万人あたり
3万人の割合に対してであり、1億2700万人でしたら何千万人という膨大な犠牲者数に対しての筈です。
次は、そのような計算が不適切とする解説例です。

【資料2】 低線量被曝の健康リスクとその対応

【参考資料】 線形しきい値なし仮説  buveryの日記
【参考資料】 リスク 確率的に起きる出来事についての考え方  学習院大学 田崎教授


記事2 「誰が「放射線は怖い」と言ったのか?・・・誠実な日本に帰ろう! 平成25年11月11日」の疑問点
文科省や内閣府は、汚染が広がるといけないということで事故の前の2010年に「規制を強化しなければならない」として、1年0.01ミリの免除レベルを決め、それを違反すると「厳罰主義」で1年以下の懲役としました。

今では信じられませんが、これが文科省が出した「厳罰」を示す説明書の一部です。今ではこの目安となる1キロ100ベクレルを、自ら80倍の8000ベクレルに変えています。

1年5ミリ以上の被曝になる可能性のある地域を「管理区域」として、そこから物品や人間が出るときには必ず測定をすることになっていました。それを知っている名古屋大学の原子力の教授は愛知県日進市が管理区域に相当する場所から花火を持ち出して夏祭りをするのに、とめるどころか「大丈夫」と言いました。
これは放射線障害防止法の改正で実験とか医療で出る放射性廃棄物の処理の為の改正です。
処理を簡単にしてコストなど負担を下げる目的であり規制強化ではなく説明とは逆で緩和です。
上の説明は何の汚染かも書かないで、汚染が広がるといけないと「福島の汚染」と読み違わさせる
意図が有るのでしょうか。
説明に使われた図は資料3の一部を、切り取ったものですが、やはり出典は書かれてません。
その資料を読まれた筈なの規制強化と逆の事を書かれたのは、なにの目的でしょうか

改正前は、そのような物は放射能があってもなくても「放射性廃棄物」だったのです。
1、法定義の放射性同位元素で汚染された廃棄物は全て放射性廃棄物
2、放射性廃棄物は指定業者(1社のみ)に渡すこと

改正後は「放射性廃棄物の内0.01mSv/yを超えないものは一般ゴミとしても良い」とし
放射能の有る無しの基準を0.01mSv/yとしたわけです。
規制を緩和すると基準を超えるものを一般ゴミにする不届き者が出る恐れがありますので
罰則を新たに設けて、ついでに他の罰金も値上げしたのです。

なぜ改正したのかは、低レベル放射性廃棄物の処理に困ってたからです。
例えば、放射性医薬品を患者さんに注射します。それで次の様なゴミが出ます。
1、薬ビン 2、使い捨て注射器 3、その時してた薄手のゴム手袋
改正前は全部「放射性廃棄物」としてました。この量がけっこう大変・・費用もたいへん
で、いくらなんでも「ゴム手袋」は違うでしょうと年0.01mSvの規制値を定めて、それらは
一般ゴミとして良いと規制緩和したのが、この改正です。
福島のガレキやら、食品中のセシウムとは無関係の話です。

今ではこの目安となる1キロ100ベクレルを80倍の8000ベクレルに変えていますと書かれてますが
100Bq/kgは従来よりあった廃棄物を、そのまま安全に再利用できる基準です。
8,000Bq/kgは、 100Bq/kg以上の線量の廃棄物を安全に処理する目的で新設された基準です。
それと 100Bq/kg以下の基準は別物で変わってません。
説明は再利用の基準とは別目的の再処理の基準を故意にか混同して非難しているのです。
【参考】 100Bq/Kg と8000Bq/Kgの、ふたつの基準の違いについて

日進市が管理区域に相当する場所から花火を持ち出しなんて書いてますが、もともと花火の
線量は非常に低く、それで保管場所が管理区域になる筈がありません。
原子力関係は詳しい筈の学者が故意に誤った情報を流す目的は何なのでしょう

武田教授にとって東日本大震災は自分が何らかの利益を得るチャンスなのでしょうか
復興に向かっている、この時期に故意に誤った情報で不安を煽る彼の目的は何なのでしょう。
私は福島に隣接して住むものとして見過ごせないので以上を書きました。
【資料3】 放射線同位元素による放射線障害防止に関する法律の改正の概要 (PDF)



【参考文献】 やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識